コスト基準型価格設定方法
取り扱う商品のコストをベースに価格を設定するという一番ベーシックな価格設定方法だ。但し、直接生産を行うメーカーの場合はコストプラス法、仕入を主にする小売業、卸売業はマークアップ法で考える必要がある。
1.コストプラス法
メーカーの場合 「原材料費、労務費、物流費などの製造原価などの直接費(変動費)」と 「販促費、広告費、原価償却費などの間接費(固定費)」 に、一定の利益を加えたものを商品の販売価格とする。
- 「価格=(直接費+間接費)+一定額の利益」
例えば、1商品あたりの製造単価が10,000円のものに2,000円の利益を付加して12,000円で販売する、といった価格設定を行う。 コストプラス法は製造原価をどこまでとするかで様々な考え様がある。 そのため、業種や取り扱い商品の競合の通例を参考にする必要があるだろう。
2.マークアップ法
小売の場合は、仕入原価、人件費、販促費に一定の利幅を加えたものを商品の販売価格とする。
「売価=仕入原価+一定率の利益」
例えば、1商品あたりの仕入額が1,000円のものに20%の利益率を付加して販売する、といった価格設定を行う。 この場合、1,200円で商品を販売することになる。 コストプラス法にしろ、マークアップ法にしろ、販売会社側の立ち位置で設定される商品価格であるため、一般的にこの価格だから仕方がないと思わせられる商品に適していると言える。
競争基準型価格設定方法
自社のコストからの算出だけではなく、競合他社など外部環境との兼ね合いで価格設定をする方法だ。 こちらは3タイプに分かれる。
1.市場価格追随法
商品によってはある程度市場価格がわかる商品がある。 その市場価格帯の中で価格設定をする方法だ。 こちらも一般的に使われている価格設定法であるためイメージは容易だろう。
2.プライスリーダー追随法
業界を先導するプライスリーダーに倣って商品価格を設定する方法だ。 業界によっては、強いリーダーシップを持って価格競争を行う業者がある。 市場に与える影響が大きいほど、競合他社はそのプライスリーダーに追随しなければいけない状況が生まれる。 わかり易い例としては、ブロードバンドや携帯電話業界に革命を起こしてきたソフトバンクなどだ。
3.慣習価格法
その業界において習慣的に設定されてきた価格帯がある場合に、それに倣って価格設定する方法だ。
例えば自動販売機のジュースの値段は120-130円前後というイメージがあるが、たまに80-90円のものを見かける。 ただし、プライスリーダー追随法のように、各社がその価格に引っ張られることはない。 これは、慣習価格が強いため、仮に低価格に設定しても販売数量に大きな影響を与えず、売上としては下がってしまう可能性があるからだ。 コンビニ商品のほとんどが、ある程度の価格帯が決定されている慣習価格と言える。
どの価格決定方法も外部環境に依存したもので、自社判断がつけづらい場合、または成熟した市場の中で競争を行う際、市場に影響を与えるほどのUSPを有していない場合に、これらの価格設定方法を用いる必要がある。
3.マーケティング戦略基準型価格設定方法
内部環境、外部環境に依存せず、マーケティング戦略において適正価格を自ら設定する方法だ。 WEBマーケティングにおいて、このマーケティング戦略型の価格設定方法が如何に重要であるかを知っていただきたい。
価格差別化
例えば1万円の商品であっても、全ての消費者が同一の価値を感じるわけではない。消費者の状況、時期などによって常に価値が変わり続けている。
- 例)
- ・若者と高齢者が入る生命保険
- ・平日早朝、深夜に見る映画と土日昼間に見る映画
- ・初めて試す化粧品と使い続けている化粧品
仮にそれぞれの事例で価格が同じであった場合、消費者が感じる相対価値は変わるはずだ。 価格差別化とは、その市場において複数の相対価値が存在する場合に、価格差を設けて販売する価格設定方法だ。 事例のように、若者と高齢者が支払う保険金額は違うし、映画の早朝・深夜割引は差別化に該当する。 お試し価格が設定されていたり、使い続けている人ほど割安になっていく料金設定などもある。
名声価格法(プレミアムプライシング)
何らかの価格設定において、「プレミアムプラン」という言葉を聞いたことがあるだろう。 また、同品質のバッグが、1つはノーブランド、1つはブランドの場合に価格が違うことも知っているだろう。 同一カテゴリーにおいて、複数種類の価格を設定し、品質の違い、付加サービスの違いによって行う価格設定を名声価格法と呼ぶ。クレジットカードは年会費や消費額によって会員に明確な区別がある。
この場合、その商品自体のブランディングや希少性(という思い込ませ)によって価格を設定するパターンと実際の品質やサービス付加によって、松竹梅のように価格差を設けるパターンが考えられる。
WEBマーケティングにおける価格設定方法
3つの基本価格設定方法を見ていただいたわけだが、WEBマーケティングにおける価格は、これら全てを考慮しなければいけないということに気付いただろうか。
マーケティング戦略基準型価格設定方法は、その価格設定プロセスがUSPになり得るが、基本的にはベース価格がなければ商品価格は設定しづらい。 そして、多くの商品において、WEB上での商売は、オフラインでの優位性がフラットになってしまうため、WEBマーケティングに適したUSPを打ち出さなければならない。
つまり、コスト基準型価格設定方法か競争基準型価格設定方法で設定された商品価格をベースに、マーケティング戦略基準型価格設定方法による味付けが必要になるというわけだ。
WEBマーケティングにおける価格設定方法に関しては、次回ノウハウを持って、もう少し深堀りしたいと思う。
最後に
商品価格設定に関する顧客の悩みを聞くことは非常に多い。
もちろん、真剣にアドバイスをすることが前提なのだが、商品価格はセンシティブなものであるため、顧客の熱量によって、私がどこまで立ち入って良いかは変わってきてしまう。 もしWEBマーケティングのプロフェッショナルだと信頼できる業者が周りにいるならば、一度真剣に価格設定の相談をしてみて欲しい。 当たり前の話しだが、プロフェッショナルは成果を出し続けているため存続できている。
「商売の根幹となる販売促進に携わっているプロフェッショナル」と膝を突き合わせて真剣な話をすることは、決して無駄なことではない。 その場合、必ずこの3つの基本価格設定方法を念頭にアドバイスをくれるはずである。
監修者:古瀬純功
free web hopeの広告運用コンサルタントとして、広告運用支援やweb解析、ダッシュボード作成を担当:Xアカウント